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東京12チャンネル事件

最判昭和43年12月24日(第三小法廷) 民集22巻13号3254頁 / 左:判旨 / 右:論証のポイント

事件のあらまし

事案・争点結論
事案

東京のテレビ放送の1 つの周波数をめぐって、原告と財団法人日本科学技術振興財団(のちの東京12チャンネル)が免許を申請し、あらそった(競願)。郵政大臣(いまの総務大臣)は財団に予備免許を与え、原告の申請は拒否した。

原告は異議申立てをしたが棄却されたので、その棄却決定の取消しを求めて訴えた(当時の電波法は裁決主義なので、訴えの対象は棄却決定)。

東京高裁は原告の言い分を認めて棄却決定を取り消し、郵政大臣が上告した。

争点

(1) 拒否処分(棄却決定)を取り消しても、財団の免許は自動的には消えない。それでも原告に訴えの利益はあるか

(2) 財団の免許期間が満了しても(再免許を受けて事業を続けている)、訴えの利益はのこるか

上告棄却(原告の勝ち)。原告には訴えの利益がある。

判決の全体の流れ
  1. 原告への拒否と、財団への免許は表裏の関係
  2. 拒否(棄却決定)が取り消されると、行政庁は白紙の状態にもどって、2 つの申請を比べ直す
  3. だから競願者は、自分への拒否処分の取消訴訟も、相手への免許処分の取消訴訟も起こせる
  4. 再審査の結果、相手の免許を取り消して自分に与えることもありうる → 拒否処分だけを争っても訴えの利益あり
  5. 免許期間が満了しても、すぐ再免許されて事業が続いているなら、訴えの利益はなくならない

令和6年 問題44(記述式)は、この判例を知っていることが前提の問題。

判旨と論証のポイント

判旨論証のポイント
判旨 ① 拒否と免許は表裏の関係

「訴外財団と被上告人とは、係争の同一周波をめぐつて競願関係にあり、上告人は、被上告人よりも訴外財団を優位にあるものと認めて、これに予備免許を与え、被上告人にはこれを拒んだもので、被上告人に対する拒否処分と訴外財団に対する免許付与とは、表裏の関係にあるものである。」

論理の流れ
  1. 周波数は 1 つ → どちらか一方にしか免許は出せない(競願関係)
  2. 行政庁は 2 つの申請を比べて、財団のほうが上と判断した
  3. だから「財団に免許」と「原告に拒否」は、1 つの判断の表と裏

ここがすべての出発点。A への免許は、X にとって「よその会社の話」ではない。

✍️ 論証(表裏の関係)

X と A は同一の免許をめぐって競願関係にあり、行政庁は A を X より優位と認めて A に免許を付与し、X の申請を拒否したのであるから、X に対する拒否処分と A に対する免許処分とは表裏の関係にある。

判旨 ② 拒否処分だけを争っても訴えの利益がある

「…これが後述のごとき理由により違法たるを免れないとして取り消された場合には、上告人は、右決定前の白紙の状態に立ち返り、あらためて審議会に対し、被上告人の申請と訴外財団の申請とを比較して、はたしていずれを可とすべきか、その優劣についての判定…を求め、これに基づいて異議申立てに対する決定をなすべきである。

すなわち、本件のごとき場合においては、被上告人は、自己に対する拒否処分の取消しを訴求しうるほか、競願者(訴外財団)に対する免許処分の取消しをも訴求しうる(ただし、いずれも裁決主義がとられているので、取消しの対象は異議申立てに対する棄却決定となる。)が、いずれの訴えも、自己の申請が優れていることを理由とする場合には、申請の優劣に関し再審査を求める点においてその目的を同一にするものであるから、免許処分の取消しを訴求する場合はもとより、拒否処分のみの取消しを訴求する場合にも、上告人による再審査の結果によつては、訴外財団に対する免許を取り消し、被上告人に対し免許を付与するということもありうるのである。」

論理の流れ
  1. 国の言い分:拒否を取り消しても、財団の免許は消えない。周波数は 1 つだけ → 原告が勝っても意味がない(訴えの利益なし)
  2. 最高裁:拒否が取り消されたら、行政庁は白紙の状態にもどり、2 つの申請を比べ直す
  3. だから、自分への拒否処分の取消しでも、相手への免許処分の取消しでも、目的は同じ(=優劣の再審査)
  4. 再審査の結果、財団の免許を取り消して原告に与えることもありうる → 訴えの利益あり

結論:競願者は、どちらの取消訴訟も起こせる。令和6年 問題44 の解答の中心。

✍️ 論証(競願者の訴え)

X に対する拒否処分が違法として取り消された場合、行政庁は処分前の白紙の状態に立ち返り、X と A の申請の優劣を改めて審査すべきこととなる。したがって X は、A に対する免許処分の取消しを求めることができるほか、自己に対する拒否処分のみの取消しを求めることもでき、いずれの場合も、再審査の結果によっては A に対する免許が取り消され X に免許が付与されることもありうるから、訴えの利益が認められる。

判旨 ③ 免許期間が満了しても、再免許なら訴えの利益はのこる

「…期間満了後再免許が付与されず、免許が完全に失効した場合は格別として、期間満了後ただちに再免許が与えられ、継続して事業が維持されている場合に、これを前記の免許失効の場合と同視して、訴えの利益を否定することは相当でない。けだし、訴えの利益の有無という観点からすれば、競願者に対する免許処分の取消しを訴求する場合はもちろん、自己に対する拒否処分の取消しを訴求する場合においても、当初の免許期間の満了と再免許は、たんなる形式にすぎず、免許期間の更新とその実質において異なるところはないと認められるからである。」

論理の流れ
  1. 国の言い分:財団の最初の免許期間はもう終わった → 争う意味がない
  2. 最高裁:期間が終わっても、すぐ再免許されて事業が続いている
  3. 再免許は、もとの免許を前提にしたもので、実質は期間の更新と同じ
  4. → 訴えの利益はなくならない(再免許されず完全に失効したときは別)

「期間がすぎたら訴えの利益がなくなる」という形式論をしりぞけた。訴えの利益は、実質で判断する。

答案の型(まとめ)

テーマ中身
競願と取消訴訟の書き方

許可・免許の枠が限られていて、一方に与え他方を拒否した場面が出たら、この順番で書く。

1 被告:処分をした行政庁の所属する国または公共団体(行訴法11条1項)

2 表裏の関係:一方への免許と他方への拒否は表裏

3 争える処分:相手への免許処分の取消訴訟も、自分への拒否処分の取消訴訟も起こせる

4 訴えの利益:拒否が取り消されれば白紙にもどって再審査 → 相手の免許が取り消され自分に与えられることもありうる

5 期間満了:再免許で事業が続いていれば、訴えの利益はなくならない

キーワード:「競願関係」「表裏の関係」「白紙の状態に立ち返り」「再審査を求める点においてその目的を同一にする」「拒否処分のみの取消し」

判旨の文は、判決の全文(裁判所の裁判例検索)からの抜き書き(「…」は省略)。